2016年09月20日

リハビリテーション

さすがに公演期間中は台本以外のテキストに目を通す余裕が皆無だったので、終わって一週間ちょい、社会復帰しつつまとめて読みたかった本を片付ける。

法月綸太郎『法月綸太郎の冒険』『一の悲劇』『ノックス・マシン』『法月綸太郎の功績』
鯨統一郎『パラドックス学園』で「日本でもっとも論理性の高い本格ミステリ作家」と紹介され、あとSF論壇でも作品が取り上げられたりして、「絶対好きだろうな」と思いつつ読んでいなかった作家。とりあえず手当たり次第に。
「悩めるミステリ作家」という渾名の通り、ミステリというジャンルについて非常に実験的・思弁的に取り組む姿勢がとにかくクール。隙のない、論理性の塊みたいなパズラーだからこそむしろ高い芸術性を感じるし、そのハードコアな姿勢に、思考と試行=ジャンル愛という熱が乗っている。ハードボイルドでなく本格ミステリなのに、なんとも「カッコいい」小説なのだ。
特に『ノックス・マシン』収録の短編どれもは本当に素晴らしかった。呆けた脳が久々にカッと熱くなるような感覚。表題作なんてグレッグ・イーガン並みの物理用語のオンパレードなのに、ちゃんと「謎解き」になっているうえ、センス・オブ・ワンダーありジャンルへの提言ありで現時点の今年の短編小説ベスト。「なぜ今まで読んでこなかったんだ!」という後悔しつつ「新しい狩場見つけたぞ!」と舌舐めずりが止まらない。パズラーゆえ内容を語りづらいのが非常にもどかしい。

瀬名秀明『BRAIN VALLEY』
法月綸太郎によってSF脳が活性化されたので、ガチガチのハードSFを、と思い手に取る。この作家も『パラサイト・イブ』それから短編集一冊しか読んでいない。
文学、というか芸術の重要なテーマのひとつが「神」だと思う。「神とは何か」、直接的にしろ間接的にしろ、その答えを表現する方法として、文学も音楽も美術も発展してきた。エンターテイメントだって芸術性を持っている以上、多かれ少なかれその部分を持つ。ボーイ・ミーツ・ガールものなんて、その最たるものだ。一目惚れって天啓だろ。
そういう意味で、その芸術の最大の課題に真正面から向き合い、SF的回答を用意したのがこの作品。本当に逃げずに、寓意とか多義性に迂回せずに、科学を絵筆に「神」の正体を描く。そこに作者の作家としての、そして科学に携わるものとしての野心と責任感を感じた。
「神」が何なのか、知りたくないか?結構なページ数と、山盛りの学術的記述を超えた先に、そのご褒美としてとんでもない答えが転がってるぜ。

そして明日は冲方丁『マルドゥック・アノニマス』の二巻の発売日。読みたい本ばかりが溜まっていく。金も時間も溜まらないが。


posted by 淺越岳人 at 23:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月07日

「上阪」

東京公演終了後、中二日で大阪へ。

「上阪」、と書こうとしてふと筆を止める。
意味あってたか?そもそも、そんな言葉あったか?
辞書を引く。アプリだから打ち込む、か。真逆だ。

「地方から大阪へ移り住むこと」

なるほど。「上京」の大阪バージョンね。つまり、言葉としては存在するが誤用ではあったようだ。
じゃあ来阪、かな。だが俺たちは行く方で主客が反対だしなあ。

ま、実は千葉の劇団だし、コメディだし。地方みたいなもんでしょ。というかそういう辺境精神は未だ拭えない。東京進出だって結構なイベントだったんだ。
でもそんな東京の、コメディシーンの代表のつもりで行くけどね。獲ったベルトは掲げなきゃダメだ。

というわけで。
アガリスクエンターテイメント、上阪。
posted by 淺越岳人 at 21:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 芝居 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月02日

To make 'em laugh, not to make 'em laugh.

明日である。

始まってみると早いもので、東京公演は日程的にも公演数でも折り返した。評判もウケもなかなかである。動員はもう少し頑張りたい部分もあるが。

しかし、だ。
『笑の太字』Cチーム、つまり我々だが、は日程後半に入りようやく明日初日なのである。というか、東京ではこの一回しか演らないのである。ま、『七人/ワイフ』はずっと出てるんだけど。

さすがに小屋入っているうちはなかったが、帰りの電車の今は正直「取るもの手につかず」である。だからコレを書いている。

他のメンバーは知らないが、おれは他のチームに敗けたくない。もっと言えば同チームの塩原にも敗けたくない。全方位的に対抗心でいっぱいだ。同じ作品を演る以上、そこには絶対的な「比較」は現れる。付け難かろうが「甲乙」が確実に出てくる。そしてコメディである以上、「ウケるかウケないか」という明らかな採点基準が存在する。
だからコメディってスリリングで好きさ。
「勝負じゃない」とか言えるのは、持てる者の余裕だ。「みんなちがってみんないい」なんて勝組が嫌われないための処世術だ。敗けっぱなしで舐められっぱなしの持たざる者がそれを言ったら。それは負け犬だ、遠吠えだ。環境とか状況とか立場とか、それぞれだ。その中で勝てるカードを総動員してやるしかないんだ。
闘わざる者、克つべからず。

だから色々足りないおれは、言わなきゃならない。言わなきゃならないから、言う。
おれが一番面白いよ。

明日9.3、16:00。
『笑の太字』Cチーム。

お待ちしております。

posted by 淺越岳人 at 22:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 芝居 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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